その鋭い独特の視点と多彩な才能で、小説だけでなく各分野で活躍するアグレッシブな寓話作家の一人である村上龍の作品をとりあげています。
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イビサ (講談社文庫)
村上 龍
講談社 刊
発売日 1995-04
オススメ度:★★★★
本当に破滅的と言えるのか… 2009-10-12
前半は、確かに麻薬的な世界に無理やり引きずり込まれるようなパワーを感じる。これは傑作だと思いながら読み進んでいったところ…
モンテカルロで「ガイド」の幽霊が姿を現すあたりから、どうも気分が乗らなくなってくるのだ。ジョエルが消える際も適当な逃げ口上を言っているとしか思えなかったり、モロッコの砂漠地帯での数日も結局無駄な感じがしてしまう。最後にたどり着くイビサでの結末も、なんだかあっけない感じである。この結末、個人的には作者自身の言葉にもかかわらず「破滅的」とは全く思えないのだが。
文章的に、その後半に入ってから特に目立つようになるのが1段落の長さである。1ページ2ページはざら。特に上記砂漠地帯が描かれる部分では8ページ近く改行なしで延々と書き連ねられる。文章自体がわざと読みにくくしているようなタイプではないだけに逆に「何故改行しない?」と思ってしまった。
止められぬ、魂の鼓動 2009-04-07
今まで読んできた村上龍作品の中でも、頭抜けた傑作の一つと言っていい。これだけ退廃的で淫靡で、それでいて詩的で耽美な小説が、他にどれだけ存在するだろうか?
日本女性をアラブに売買している男に言い含められ、男の正体を知らないままに共にパリへと旅立つ孤独な娼婦。だが、彼女はそこで自らの具現化した意思の存在に気付き、それによって間一髪のところで危難を察して、男のもとから逃亡する。様々な性的倒錯者と出逢い、別れながら、彼女の孤独な旅は続く。そして、小説の表題でもある「イビサ」へと最後に辿り着いた彼女を待っていたのは、驚愕の現実だった…。
売春をしていた新宿の裏路地、華やかなパリ、官能美に満ちたカサブランカやマラケシュ。この作品だけに限ったことではないのだが、村上龍の(特に海外の)街やそこの名も無き群像の描写には、そのルポルタージュのごときリアルさに、小説であることを失念しそうになる。
作中の登場人物達は、救いようもなく奔放で、無尽蔵な欲望に対してハイエナのように貪欲だが、それでも大車輪で道を突き進む。決して好感の持てる者逹ではないし、むしろ嫌悪すら抱く。だが、彼らには紛れもなく、精悍な生命の律動が感じられる。
「トパーズ」同様、性表現は過激極まりないし、文体も取っつきづらい。だが、この小説のソフィスティケートされた情景と神話的なスケールの前には、それらの欠陥はさしたる意味を成さない。この小説のテーマは「破滅」だが、その延長線上には希望が必ずあるはずだと、私は願いたい。
革命 2008-06-17
自身の欠如を自覚し、全く異にするもので補う、それ自体は自覚しないことが既に、革命的な要素を含むことを、本書を読み、学んだ。
さらに詳しい情報はコチラ≫
村上 龍
講談社 刊
発売日 1995-04
オススメ度:★★★★
本当に破滅的と言えるのか… 2009-10-12
前半は、確かに麻薬的な世界に無理やり引きずり込まれるようなパワーを感じる。これは傑作だと思いながら読み進んでいったところ…
モンテカルロで「ガイド」の幽霊が姿を現すあたりから、どうも気分が乗らなくなってくるのだ。ジョエルが消える際も適当な逃げ口上を言っているとしか思えなかったり、モロッコの砂漠地帯での数日も結局無駄な感じがしてしまう。最後にたどり着くイビサでの結末も、なんだかあっけない感じである。この結末、個人的には作者自身の言葉にもかかわらず「破滅的」とは全く思えないのだが。
文章的に、その後半に入ってから特に目立つようになるのが1段落の長さである。1ページ2ページはざら。特に上記砂漠地帯が描かれる部分では8ページ近く改行なしで延々と書き連ねられる。文章自体がわざと読みにくくしているようなタイプではないだけに逆に「何故改行しない?」と思ってしまった。
止められぬ、魂の鼓動 2009-04-07
今まで読んできた村上龍作品の中でも、頭抜けた傑作の一つと言っていい。これだけ退廃的で淫靡で、それでいて詩的で耽美な小説が、他にどれだけ存在するだろうか?
日本女性をアラブに売買している男に言い含められ、男の正体を知らないままに共にパリへと旅立つ孤独な娼婦。だが、彼女はそこで自らの具現化した意思の存在に気付き、それによって間一髪のところで危難を察して、男のもとから逃亡する。様々な性的倒錯者と出逢い、別れながら、彼女の孤独な旅は続く。そして、小説の表題でもある「イビサ」へと最後に辿り着いた彼女を待っていたのは、驚愕の現実だった…。
売春をしていた新宿の裏路地、華やかなパリ、官能美に満ちたカサブランカやマラケシュ。この作品だけに限ったことではないのだが、村上龍の(特に海外の)街やそこの名も無き群像の描写には、そのルポルタージュのごときリアルさに、小説であることを失念しそうになる。
作中の登場人物達は、救いようもなく奔放で、無尽蔵な欲望に対してハイエナのように貪欲だが、それでも大車輪で道を突き進む。決して好感の持てる者逹ではないし、むしろ嫌悪すら抱く。だが、彼らには紛れもなく、精悍な生命の律動が感じられる。
「トパーズ」同様、性表現は過激極まりないし、文体も取っつきづらい。だが、この小説のソフィスティケートされた情景と神話的なスケールの前には、それらの欠陥はさしたる意味を成さない。この小説のテーマは「破滅」だが、その延長線上には希望が必ずあるはずだと、私は願いたい。
革命 2008-06-17
自身の欠如を自覚し、全く異にするもので補う、それ自体は自覚しないことが既に、革命的な要素を含むことを、本書を読み、学んだ。
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Ryu's Bar
プロフィール
HN:
ドヤ顔の人
性別:
男性
趣味:
読書(ビジネス書・小説)・ネットサーフィン・スノボー
自己紹介:
学生の頃から村上龍のファンで「コインロッカーベイビーズ」に衝撃を受け、「五分後の世界」「愛と幻想のファシズム」「半島を出よ」などの構築系の作品が大好きです。最近の龍さんの興味は経済にシフトしていますがものすごく勉強になってます。
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